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生活困窮者7割「住居決まらず」|NHK 首都圏のニュース - NHK NEWS WEB

新型コロナウイルスの影響で住まいを失って東京都が用意したホテルに一時的に宿泊し、生活保護を申請するなどしたおよそ550人について、NHKが自治体にアンケート調査を行ったところ、新たな住まいがまだ決まっていない人が全体のおよそ7割に上ることが分かりました。
生活に困窮する人が急増し、住まいの確保が難しくなっている実態が浮かび上がっています。

新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮し住まいや居場所を失う人が急増する中、東京都はビジネスホテルに一時的に宿泊してもらう取り組みを進めていますが、緊急事態宣言が解除され、無料で宿泊できるのは最長でも来月7日までとなっています。
NHKはホテルに宿泊し、生活保護を申請するなどした551人について、今後の住まいが確保できているかどうか都内の自治体にアンケート調査を行いました。
その結果、先月末の時点で新たな住まいが決まっていない人が392人と、全体の71%に上ることが分かりました。
その理由については「アパートや困窮者向けの宿泊所などの空きがない」という人が120人に上っていて今後はネットカフェに戻るという人も80人いました。
NHKが調べたところ、東京23区ではことし4月の生活保護の申請件数が2121件と、去年の同じ時期より40%増えています。
このため、都心部では生活保護の家賃補助で借りることができる低家賃のアパートがいわば奪い合いの状態になっていて、生活に困窮する人の住まいの確保が難しくなっている実態が浮かび上がっています。
貧困や生活保護の問題に詳しい日本福祉大学の山田壮志郎准教授は「今回の緊急事態によって住宅支援の不十分さが表面化した形だ。ビジネスホテルの滞在期限が迫る中で次の行き先が見えないのは非常に不安だと思う。住居が確保できるまでホテルに宿泊できるようにしたり、生活保護の家賃補助の上限額を引き上げたりするなど、実態に合った支援を行うべきだ」と指摘しています。

アンケートでは、新型コロナウイルスの影響で住まいや居場所を失い、生活保護を申請するなどした551人の年代や性別についても調査しました。
その結果、50代が143人と最も多く、30代が122人、40代が120人、60代が78人、20代が60人などとなっていて、働き盛りの世代を中心に幅広い年代の人たちが感染拡大の影響を受けている実態が明らかになりました。
男女別では男性が477人、女性が74人となっています。
また、生活保護の受給者の住宅支援について課題だと感じる点について複数回答で尋ねたところ、東京23区のうち15の区が「生活保護の基準額で入れるアパートが少ない」と回答しました。
また「区内全域で再開発が行われ、基準額で入居できる古いアパートがなくなってきた」などと、時代の変化で生活に困窮した人の住まいの確保が厳しくなっていることをうかがわせる回答もありました。

「最後のセーフティネット」と呼ばれる生活保護を申請しても住まいを確保できない人が相次いでいます。
先月中旬、JR新宿駅近くの高架下で寝泊まりをしていた36歳の男性です。
男性はこれまでネットカフェで寝泊まりしながら都内のホテルで働き、月に27万円ほどの収入を得ていました。
しかし、ことし3月末で退職し、転職先を探していたさなかに感染が拡大しました。
ネットカフェも休業になり、宿泊施設を転々としながら仕事を探していましたが、転職先は見つからず、所持金も底をつきました。
このため初めて路上生活を余儀なくされ、公園の水を飲んで飢えをしのぎ、寝袋にくるまって過ごす日々が1週間ほど続いたといいます。
その時の状況について男性は「『これは悪い夢で目覚めたら元の生活に戻っている』と何度も考えましたが、朝、目覚めると状況は変わらず『このまま死んでしまおうか』と頭によぎりました」と話しました。
男性は悩んだ末に生活保護の申請を決断し、当面は最低限の生活費の支給を受けながら、東京都の支援策によって、無料でビジネスホテルに宿泊できることになりました。
家賃の補助も受けられる見通しになり、アパートを借りて生活を立て直そうとしました。
しかし、生活保護の受給者を敬遠する大家も多く、男性には保証人や緊急連絡先になってくれる家族もいないため、物件探しは難航しました。
また、生活保護を申請する人が急増する中、家賃補助の上限額の月5万3700円以下で借りられる低家賃のアパートが奪い合いの状態になっていて、3日までにあわせて10軒の不動産会社に相談しましたが、入居できるアパートは今も見つかっていません。
男性は、「1件のアパートを何人もが争っている状況で、生活保護を受給してもこんなに厳しいのかと正直驚きました。しっかりとした仕事を見つけるためには、住所が必要になると思いますが現状は厳しく、いつアパートが見つかるのか不安です」と話していました。

感染拡大の影響が深刻化し、経済的に困窮して新たに生活保護を申請する人が急増しています。
NHKが感染拡大に向けた取り組みを重点的に進める「特定警戒都道府県」に指定されていた13都道府県のうち東京23区と政令指定都市や県庁所在地のあわせて39の自治体に取材したところ、ことし4月の生活保護の申請件数は8701件に上り去年の同じ時期より32%増えたことが分かりました。
中でも東京23区の申請件数はあわせて2121件に上り、去年の同じ時期より40%も増えています。

ことし4月の生活保護の申請件数が去年の同じ時期より70%あまりも急増した新宿区は、アンケート調査に9割以上の人の今後の住まいが決まっていないと回答しています。
新宿区生活福祉課の片岡丈人課長は、「以前から、新宿区内では生活保護の家賃補助の上限額で借りられるアパートがある程度、埋まっていたが、感染拡大の影響で新たな需要が発生し、対応が困難になっている。住まいを落ち着いた場所にきちんと定めていただくことが自立に向けた大前提になるので、家賃補助の額を実態に合わせて引き上げるよう国に要望していきたい」と話しています。
また、アンケートに回答した別の自治体の担当者は、「生活保護の家賃補助で借りられるアパートがもともと地域に少なく生活保護の急増で物件が“取り合い”ともいえる状態になっている。ビジネスホテルに宿泊できる都の支援策が期限を迎え、次の住まいが見つからなければ、生活保護を受けても一時的にネットカフェに戻らざるをえない深刻な状況にある」と話しています。

東京都は、緊急事態宣言に伴い住まいや居場所を失った人たちの一時的な宿泊施設として、ビジネスホテルの部屋を無料で提供していて、1日の時点でのべ1094人が利用しています。
このうち、生活に困窮し福祉の窓口で生活保護を申請するなどした、551人がホテルに宿泊できるのは最長でも来月7日までとなっていて、多くの人が今後、アパートなどを自分で探す必要があります。
東京23区の生活保護の家賃補助の上限額は単身世帯の場合、原則、月5万3700円となっていますが、都心部では低家賃で借りることができるアパートの数が限られているほか、生活保護の受給者などが入居する「無料低額宿泊所」もすでに多くが満室の状態になっています。
東京都地域福祉課の畑中和夫課長は「アパートを見つけるのに苦労している人が多く、先月末までだったホテルに宿泊できる期間を延長するなどの対策を取っている。区や市は、住まいが確保できるよう粘り強くサポートしてほしい」と話しています。

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June 03, 2020 at 12:52PM
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