新型コロナウイルスが、県内の大学生にも暗い影を落とし続けている。今も生活の不安を抱え、友人らと会えないことにストレスを感じる学生も少なくない。茨城大のゼミが学生を対象に実施した調査では、40%が「アルバイトの収入が減った」と答え、経済的な理由で食料購入が困難だったり、医療機関の受診を控えたりする人もおり、厳しい生活状況が浮かび上がる。(水谷エリナ)
茨城大一年の女子学生(19)は水戸市内の実家で母と二人で暮らす。自分の生活費や授業料は貸与型奨学金やアルバイト代、別居の父からの月六万円の養育費で賄う。
女子学生は「父が働く警備会社はコロナでイベントがなく仕事が減っていると聞いている。いつまで、養育費をもらえるか分からない」と不安をにじませる。
別の一年の女子学生(19)は、大学入学に合わせて一人暮らしを始め、オンライン授業で人に直接会えない生活が続いた。「何げない会話もなくてさびしかった。後学期に八回、対面授業をすることになったけど、大学に来られない人もいるから対面授業の回数が減りそう」と話す。
生活の足しにしようと入学してすぐにアルバイト先を探したが「感染が怖くて、探すのをやめた」。開始したのは感染がある程度落ち着いた八月からだった。
こうした困難に直面する学生たちの支援につながるきっかけにしようと、茨城大人文社会科学部の労働経済論ゼミが、新型コロナによる学生生活への影響を調べた。六月二十六日〜八月十二日、インターネット上で学部生七百十四人から回答を得た。
調査票では「オンライン授業により経済的負担は変化したか」「新型コロナの影響でアルバイトの収入に変化はあったか」などの三十七項目について聞いた。
経済的影響では、全体の8・5%、一人暮らしの13・3%が「食料の購入に困った」と回答。一人暮らしの9・3%は「医療機関の受診をためらった」とした。「休学や退学を考えたことがある」もしくは「検討中」とした学生は二十六人(約3%)いた。
アルバイトはシフトがなくなったり、やめたりした学生は多く、収入が減少したと回答したのは約40%だった。
一方、仕送りの減少やオンライン授業による出費の増加で経済的影響を受けているにもかかわらず、アルバイトを継続できていることから、支援を受けられずにいる学生もいる。
オンライン授業による悩みも多い。学生の半数以上が「友人と会えずストレス」と回答。通信環境の悪さを訴える学生も。自由記述欄では、課題が増加し、アルバイトの妨げになっていると指摘した学生もいた。
調査プロジェクト代表で三年の森田彩未さん(20)は「食費や医療機関の受診は命に関わり、最後に削るところだ。削らないといけないほど困っていて、ギリギリのラインにいる人が多いと感じる」と話す。
同じく三年の松原日向子さん(21)は「調査は、SOSをはっきりと出していなくても、困っている人がいる証明になると思う」と調査結果が学生支援につながることを期待する。
調査結果は大学のほか、学生を支援する団体に配布している。
◆対面授業など 3密避ける工夫
県内の大学では対面授業やサークルなどの課外活動が少しずつ再開され、元のキャンパスライフに戻りつつある。ただ、新型コロナウイルス感染予防の観点から、制約も多い。
茨城大では、九月二十九日から後学期が再開したのに伴い、授業もオンラインから対面に切り替えつつある。水戸キャンパスでは、約三割の授業で対面にしている。
対面授業では、教室は収容人数の30〜50%程度の人数で使用するなど三密を避ける工夫をしている。教員がキャンパス間を移動していた授業などは、そのままオンラインを基本とする。
サークル活動は十月十九日以降に再開。所属する全学生が感染対策の研修会を受講することが条件となっており、当面、活動は週に一回に抑えられる。
筑波大(つくば市)では十月一日からの秋学期で三分の一ほどの授業で対面授業が再開した。実験・実習を伴う研究指導やゼミ活動は二十人未満の少人数で実施し、学生に直近十四日の健康観察記録を携帯することを求めている。
対面授業の再開と同時に、サークル活動は、希望する学生団体からの届け出を受け付け始め、順次、再スタートさせている。大学は「活動前後の手指消毒を徹底する」「会食、懇親会などは行わない」「発熱、体調不良を感じた場合は、活動に参加しない」などとガイドラインに定めている。(水谷エリナ)
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November 10, 2020 at 05:45AM
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