楽天モバイルは12日、新料金プランとして「Rakuten最強プラン」を発表した。同日に開催された報道陣向けの発表会には、同社代表取締役会長の三木谷浩史氏らが登壇した。
本稿では、質疑応答で三木谷氏が語ったことを中心にお届けする。
発表会の内容をおさらい
新料金プランとして発表された「Rakuten最強プラン」のコンセプトは“最強無限”。これまで、KDDI(au)回線を利用したパートナーエリアでは、国内の場合、5GB超過後に速度制限がかかっていた。「Rakuten最強プラン」ではこの制限が撤廃される。
価格はこれまでの料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」と同様、最大3278円。6月1日から提供が始まる。また、「Rakuten Link」のデスクトップ版も8月にリリースされる。
質疑応答
――今回、プランの内容に関して一番大きく変わったのが、パートナー回線エリアの容量制限の撤廃だと思う。パートナー回線は基本的に借りているものなので、利用者がデータを使うとその分KDDIへの支払いが増えると思う。借りられる単価が下がったのか、自社回線へ流れる量が多くなったのでまかなえるのか、裏付けを知りたい。
三木谷氏
守秘義務契約があるのですべて話すことはできませんが、ひとつは、楽天が自社の回線を頑張ってきたことがあります。両者の間で経済合理性がある契約を、期間を少し伸ばしながらやったほうがお互いのためにとってプラスであろうというご英断を、KDDIにいただいたと思っています。
詳細は申し上げられませんが、このプランにしたことによる追加的な財務負担というものは基本的にはないと考えていただいていいかなと思います。
今回の業務提携では、いわゆる繁華街を中心とした東名阪エリアについてもプラチナバンドを使わせていただく。また、楽天からパートナー回線へ移るときは問題なかったのですが、戻るときに多少のラグが発生するようなことも技術的な協力によって解消されていきます。今後も発展的にいろいろできる可能性はあるかなと思います。
――今回の業務提携などによって、楽天モバイルの自社ネットワーク建設のスケジュールが後ろ倒しになる予定は。
三木谷氏
(KDDIの)髙橋社長もおっしゃっていますが、今後5Gやさらなる技術も出てくるなかで、ある程度は自社回線ベースでやりますが、すべて自社回線でやるわけでなく、ネットワークはネットワークですから、シームレスになればどちらでもかまわないという考えに変わりつつあります。
楽天モバイルが新しい契約を周期的にしたことで、可及的速やかに自分のネットワークだけを構築する必要もなくなってきたと考えています。
既存でやっている分については進めていきますが、最終的に(人口カバー率が)99.9%まで達しているので、それほど急がなくてもいいようになりました……なんとなくファイナンシャルリポートの発表会みたいになってきましたが(笑)、そのように考えています。
――今回の料金プラン、料金を据え置きにした理由を詳しく知りたい。費用面のところでの不安が、投資家だけでなく利用者側にもあると思う。これから楽天モバイルのサービスを本当に継続して利用できるのか、安心して利用するための材料がほしい。
三木谷氏
皆さんがザクザク入って(加入して)いただけると、そのまま行けるんじゃないかなと(笑)。それはちょっと冗談ですが、新しい技術でやっていることによって、圧倒的なコストが削減できていることがひとつあります。
店舗も充実しているわけですが、大半の方がオンラインで加入してくることもひとつある。そして、仮想化技術など、技術的に運用コストが他社さんとは違うがゆえに、ある程度の加入者があれば、健全な財務状況の運営ができていくと考えています。
データ容量がどんどん増えてきているので、ARPU(利用者ひとりあたりの平均収入)も上がっていて、上限の2980円(編集部注:税込みで3278円)のほうに近づいています。楽天グループのサービスによる追加的な利益もそれなりに大きい。
楽天エコシステムほど強力なエコシステムを持った会社がモバイル業界に入るというのは、モバイル事業単体の利益もそうですが、グループ全体での収益への貢献も見なければいけません。
Amazonさんがクラウドサービスで大きな収益を上げていらっしゃるように、(楽天モバイルの通信プランは)ソフトウェア技術の外販のショーケースでもある。単体でのそこそこの収益、エコシステムへの貢献、ソフトウェアの外販、この3つを総合的に判断した価格設定であると考えていただければいいかなと思います。
――楽天モバイルの品質についてはどう考えているか。
三木谷氏
品質に関しては、基本的には3つあると思います。ひとつはカバレッジ、もうひとつは速度、それから単純な通信品質……これは、通話がきれいとかそういうこと。
後半の2つについては、非常に新しい技術を使っていて他社より優れている部分もありますし、レースをする部分はほぼなくなったかと思っています。
ただ、日本人の方はカバレッジというものを気にしますので、そこがひとつ大きなポイントでした。あとはすごく正直に言って、非常に混雑しているエリアというものがありましたので、そこをどう解決するか。その2つが課題でした。そういった点で、今回の新ローミング契約は非常にプラスになったのかなと思います。
70%の大きな課題というのはこのカバレッジだったわけでして、それが今回、ほぼ解決されると思います。
――損益分岐点となる契約者数はどれくらいか。
三木谷氏
我々が目指しているのは、日本のマーケットに限らず健全な携帯ネットワークを構築できる新しい技術です。世界の携帯ネットワークの中核を担うのがひとつの目標です。
その意味ではドイツやカナダ、米国もそうですし、東南アジアでもかなり成功を収めつつあると思っています。損益分岐点については今後のコストリダクションにもよるので言及は避けますが、我々のサービスについては、発射台としてフェーズ1からフェーズ2に入ろうとしています。
フェーズ2の一番大きなポイントは損益分岐点に早く到達するということですが、それについては順調に進んでいます。
――KDDIとのローミングの契約の件、経緯など、もう一声教えてほしい。
三木谷氏
もう一声言いたいんですけど、守秘義務で言えないんですよ(笑)。
経緯は、紳士協定のなかでこういうディールの話についてはするべきではないと思いますし、双方の会社にもいろいろ事情があると考えます。
ただ、大きな業界的な流れということで言えば、海外ではある程度設備を共有していく流れがあります。大きなテレコム企業同士でも融通しあうということです。
ユニバーサルサービスという意味では、どこに行っても4Gや5Gが使えることは重要ですが、人口密度があまり高くないところに4本携帯のアンテナが立っているというのは、非効率的と言えば非効率的。
それが結局料金に反映されるわけですから、携帯業界のなかでも、戦う部分と協力する部分を今までと違った目線で考えていこうという「協調と競争」、このシフトが今起ころうとしているということ。これを、パートナー企業の方々も先見の明を持って見られているんではないかなと思っています。
5Gの投資や3Gの撤退、一部中国メーカーの機器の撤廃など、いろいろなかたちでコストがかかってきます。より良いネットワークを安価に提供していくという意味では、競争に加えて協調が大切になっていきます。
楽天モバイルが携帯業界に参入しなかったら、おそらく携帯料金は10%~20%上がっていると思うんですよね、正直に言って。
(自社の話として)楽天モバイルは楽天エコシステムへの貢献も大きい。最終的に(楽天モバイルは)ナンバーワンを目指しますが、その過程でも、グループへの貢献度は非常に大きいと思っています。
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