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日本の年金制度は「破綻」しない 持続させるしくみをわかりやすく解説 - 日本経済新聞

・日本の年金制度は必要な財源を現役世代からの保険料でまかなう賦課方式
・2004年度の大改正で年金財政を安定させるための新しい枠組みを導入
・年金財政は5年ごとに検証。制度を長期的に維持するための改革を継続

「自分は老後、年金をもらえるかどうか分からない」「年金は破綻するかもしれないから保険料を払いたくない」。若い人たちからそんな声を聞くことがあります。高齢者が増えて、若い世代だけでは支えられなくなるとの見方からのようです。

でも年金が支給されなくなるということはありません。将来にわたって制度を持続させるため、様々な仕組みが導入されているからです。

年金制度は2004年度に大改正

日本の年金制度は必要な財源をその時々の現役世代からの保険料でまかなう賦課方式を採用しています。制度の運営で重要なのは、年金を受け取る高齢世代と保険料を納める現役世代の人口構成です。

日本では急速な少子高齢化でこのバランスが崩れ、現役世代の保険料負担がどんどん膨らんでしまうという懸念が強まりました。そこで大きな制度の見直しが実施されました。2004年度のことです。

改正は多岐にわたりました。中でも重要だったのは、新たな年金財政の枠組みの導入です。①将来の負担(保険料)の上限設定②財源の範囲内での給付水準の自動調整③基礎年金における国庫負担割合の引き上げ④積立金の活用――の4つです。これらによって長期的な収入と支出のバランスを取ろうとしました。

具体的に見ていきましょう。

最初の保険料の上限設定は「保険料水準固定方式」と呼ばれます。それ以前は高齢者に支給する年金の総額に見合った保険料を現役世代から集めていましたが、保険料の上限を定め、その範囲内でやり繰りする方式に変えました。厚生年金の保険料率は18.3%(労使合計)、国民年金の保険料は月1万6900円(2004年度水準、その後100円引き上げ1万7000円に)と決め、現在は固定されています。

年金支給額を自動調整する仕組みを導入

併せて年金を少しずつ削る自動調整の仕組みも取り入れました。それが「マクロ経済スライド」です。現役世代の人数と平均余命の変化を基にした調整率をいいます。何やら難しい言葉ですが、分かりやすくいうと、年金が増える局面では年金の引き上げ率からこの調整率を引いて支給額を減らし、制度を長持ちさせようという趣旨です。マクロ経済スライドは一時期条件を満たさず、ほとんど実施されていませんでした。24年度は2年連続の実施となります。

現役世代の保険料を高齢者の年金に充てるのが賦課方式ですが、実はすべてを保険料でまかなっているわけではありません。長期的にみると、約7割が保険料で約2割が税金(国庫負担)、約1割が積立金です。税金は当初から投入されていました。3つ目の国庫負担割合の引き上げはこの関連です。最初は基礎年金の3分の1でしたが、2分の1に上げ、恒久化させたのです。国庫負担の割合が増えればその分、年金財政は安定します。

以下は余談です。

冒頭の若い世代の人たちの声には「保険料が払い損になるかもしれない」という思いも込められています。でも保険料を払っている・払っていないにかかわらず、買い物の際に払う消費税の一部は年金の支払いに使われています。保険料を払わずに、払っておけばもらえたはずの年金を受け取れないとしたら、そもそもの税金が払い損になると思いませんか。

本題に戻りましょう。

保険料の一部を積み立てて運用

4つ目は積立金の活用です。「年金積立金」は、それまで年金の給付に使われなかった保険料収入の一部を積み立てたものです。年金給付額のうち、保険料収入と税金で足りない部分を積立金の運用収益などでカバーすることにしました。積立金は給付を補っているといっても全体に占める割合は少なく、あくまで年金制度を安定させるのが役割です。

これらの改革によって当時、公的年金は「100年安心」な制度といわれました。実際に100年安心かどうかは分かりませんが、年金財政が安定したことは確かです。

また、おおむね100年程度の期間にわたる年金財政の検証を、少なくとも5年ごとに実施することも決めました。年金制度を長期的に維持するために必要な改革が、この「財政検証」を踏まえて決められます。次回、財政検証は24年を予定しています。

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