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【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─市場の関心はTOPIXの最高値更新時期へ | 市況 - 株探ニュース

株式ジャーナリスト 和島英樹

「市場の関心はTOPIXの最高値更新時期へ」

●主力半導体株の押し目があれば狙い目に

 3月の東京株式市場は、引き続き堅調に推移する見通しだ。上昇ピッチの速さに対する短期的な過熱感が浮上している半面で、堅調な企業業績や外部環境の良好さが下支え要因となりそうだ。日経平均株価の予想レンジは3万9000円~4万1000円。

 注目スケジュール(いずれも米国)では、1日のISM製造業景気指数、5日のスーパーチューズデー(大統領選の予備選挙集中日)、ISM非製造業景気指数、8日の雇用統計、12日の消費者物価指数(CPI)、14日の小売売上高、20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表、21日の製造業PMI(購買担当者景気指数)などがある。

 日本では15日に春季労使交渉(春闘)の1回目の集中回答結果が公表される予定。実質賃金のプラス転換に向けて、物価を上回る賃上げが実現するかがポイントになる。

 このほか、7日にECB(欧州中央銀行)理事会、19日に日銀金融政策決定会合の結果発表が予定されている。米国は金融政策の変更はないというのがコンセンサス。日銀は春闘の回答が出揃う4月にゼロ金利解除に進むとの見方が多いが、15日の集中回答の動向次第では3月に動く可能性も指摘される。

 物色面では、米画像処理半導体大手のエヌビディア<NVDA>の想定を超える好決算を受けて生成AI半導体関連が人気だが、さすがに買い疲れ感もある。ただ、テーマとしては大きいだけに、東京エレクトロン <8035> [東証P]やSCREENホールディングス <7735> [東証P]、ディスコ <6146> [東証P]、レーザーテック <6920> [東証P]などの主力銘柄の押し目があれば狙い目となりそうだ。

 3月期本決算企業は配当権利取りの動きが継続しよう。特に今年は新NISA(少額投資非課税制度)の初年であり、例年以上に資金が流入する公算もある。配当利回りが比較的高水準で、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割れている銘柄などが狙い目に。三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]などの金融株を始め、ホンダ <7267> [東証P]、日本製鉄 <5401> [東証P]、オリックス <8591> [東証P]、三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]、ENEOSホールディングス <5020> [東証P]などが該当する。

 3月下旬から4月上旬にかけて決算発表が本格化する2月期本決算企業では、百貨店のJ.フロント リテイリング <3086> [東証P]、高島屋 <8233> [東証P]、総合スーパー・コンビニのイオン <8267> [東証P]、セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]などが、25年2月期をどう見ているか。このほか、FA機器などの安川電機 <6506> [東証P]、リユースのトレジャー・ファクトリー <3093> [東証P]、建機の竹内製作所 <6432> [東証P]、半導体ウエハ搬送装置のローツェ <6323> [東証P]などの決算にも注目が集まりそうだ。

●過熱感なき上昇は続く

 日経平均株価が2月22日に、1989年12月29日に付けた史上最高値3万8915円(終値ベース)を更新した。34年間にわたる「バブル高値」の呪縛からようやく解放された。

 ここで89年と今回の高値局面を比較し、株価の現在位置をチェックしておきたい。

        1989年末      24年2月22日
 PER     61倍        16.4倍
 PBR     5.6倍        1.4倍
 企業の純利益 約18兆円      約74兆円
 時価総額   590兆円       943兆円
 出来高    4.7億株       17.7億株
 売買代金   0.83兆円      5.56兆円
 TOPIX    2884P(12月18日) 2660P

※各種資料より・筆者作成。PER、PBRは日経平均、89年は東証1部・24年はプライム。企業の純利益は89年度、22年度。

 1985年9月に米国の貿易赤字・経常赤字という双子の赤字を救うために、G5(先進5カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)によるプラザ合意でドル安誘導策が決定された。当時1ドル=240円程度だったドル円相場は、2年後には120円台へ円高・ドル安が進む。円高不況に対応するため、当時の中曽根政権・日銀は低金利への誘導とともに、財政支出の拡大による内需振興策を打ち出した。株式市場では内需関連を軸に上昇。88年に日経平均先物が登場し、先物主導で上げがさらに加速した。PBRに割高感が出ても、地価の上昇を加味した時価ベースのPBR(これを当時はQレシオと呼んだ)では割高ではないとの抗弁も聞かれた。いずれにしろ、行き過ぎていた面がある。

 当時と現在のPER、PBRを比較すれば一目瞭然で、今回の高値局面では割高感は感じられない。日本はようやく34年前に戻ったが、NYダウは34年間で14倍になっているという。デフレの脱却による物価、賃金の正常化、東証による資本効率化・低PBR是正要請などが効き、これを評価した外国人投資家の買いが需給面を支えている。25年3月期の企業収益はさらに拡大する見通しであり、中長期的にも過熱感なき上昇が継続する可能性が高い。

 次は、全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)の最高値更新時期に関心が向かっている。

(2月28日 記/次回は3月31日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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