大阪大は29日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った角膜の細胞を世界で初めて患者の目に移植したと発表した。西田幸二教授(眼科学)らが7月下旬に臨床研究として実施し、患者は今月23日に退院した。今後さらに患者3人に移植し、安全性や治療効果を確認する。
患者は、黒目の表面を覆う角膜が濁り、失明の恐れもある重症の「角膜上皮幹細胞疲弊症」を患う。研究チームは京都大に備蓄された第三者のiPS細胞から角膜の細胞を作り、厚さ0・05ミリのシート状に加工。損傷した角膜を手術で取り除き、角膜シートを移植した。
iPS細胞を活用した再生医療の臨床研究は、理化学研究所などのチームが2014年に実施した網膜の細胞の移植が最初。18年に京大がパーキンソン病の患者の脳に神経細胞を移植し、今回の角膜細胞の移植が3例目となる。
西田教授によると、角膜上皮幹細胞疲弊症は角膜を作る幹細胞がけがやウイルス感染、遺伝的な原因などで失われて発症する。国内の患者数は年間数百人。治療法は亡くなった人からの角膜移植があるが、慢性的な提供者(ドナー)不足が課題となっている。厚生労働省の報告書によると、角膜の病気全体で移植希望者は今年3月現在1613人いるが、昨年度はドナーが720人、移植手術は1155件にとどまった。
今回の臨床研究は、年内に2人目の手術を予定している。22年度までに計4人の移植と経過観察を終え、一般医療として25年ごろの保険適用を目指す。【松本光樹】
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2019-08-29 06:10:00Z
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