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イケアが新プロジェクトで探求する、日常生活におけるARの可能性 - WIRED.jp

拡張現実(AR)が“未来”だとすれば、これはまさに未来を垣間見る体験と言える。

イケアとそのイノヴェイションラボ「SPACE10」は、このほどウェブベースの新しいプラットフォーム「Everyday Experiments」を公開した。このプラットフォームでは、さまざまなデザイン・テクノロジースタジオが開発した18種類のデジタル体験がキュレーションされている。

それぞれARや仮想現実(VR)、人工知能(AI)、機械学習、空間知能(Spatial Intelligence)といった技術が使われており、人々がさまざまな方法で自宅の空間を異なる視点から見られるようになっている。

SPACE10のクリエイティヴ・ディレクターのバス・ヴァンダーポールは、テクノロジーがこれほどの影響力をもって家庭生活をかたちづくることは過去になかったと話す。「わたしたちにとって重要なのは、テクノロジーの発展に注目し、テクノロジーが家庭での日常生活をどのように再定義できるのか探求していくことなのです」

これこそが、イケアが提案する「Everyday Experiments」のインスピレーションの源だ。

未来を垣間見られる18のプロジェクト

SPACE10は、プロジェクトの多くでARを使っている。現時点でのAR技術に対するメディアからの評価は賛否両論だが、アップルやグーグル、マジックリープといった企業が注目していることは間違いない。イケアは、アップルと手を組んでARアプリを開発した初めてのブランドのひとつであり、ユーザーが自宅の居間にヴァーチャルなソファーやアームチェアを“配置”できるARアプリを2017年に公開している。

「Everyday Experiments」の最初のプロジェクトは、アムステルダムに拠点を置くデザインスタジオのRandomが開発した「Point and Repair」というデザインプロトタイプだ。擦り切れて傷んだ家具に向かってジェスチャーすると、家具の傷みに応じて複数の補修方法を提案してくれる。自分で補修する方法を説明するガイダンス動画が表示されることもあれば、部品を注文できるページに案内されることもある。

「Extreme Measures」というアプリもある。これはスペキュラティヴデザインのプロトタイプで、レーザー光を用いたセンサー「LiDAR(ライダー)」によって自宅の空間を視覚化し、測定するものだ。測定の際にアプリは部屋を「膨らむゾウ」でいっぱいにする。どうしてかって? 自宅にどのくらい利用可能なスペースがあるか、ユーザーに考えてもらうためだ。

こうしたプロジェクトのなかでも特に興味深いもののひとつに、デザインスタジオのBakken & Backが開発した「Technocarpenter」がある。これはARとVRを組み合わせることで、自分だけのイスをつくり出せる機能だ。仮想環境で手のひらや指を動かすと、それが変換され、機械学習を利用しながらイスが生まれる。自分の思い通りのデザインにできるわけだ。

どれも興味深いプロジェクトだが、近くのイケアで自分だけのイスをつくったり、自宅で家具を補修する方法を習得するといったことが近いうちに実現するわけではない。これらはすべてプロトタイプであり、例えば「Extreme Measures」や、自分の周りの曲や音を視覚化できるプロジェクト「Optical Sound System」は、どう見てもアイデアの域を出ない。

IKEA’s AR experiments

IMAGE BY IKEA

インスピレーションの源として

イケアのプロジェクトは、ARをベースとするほかの多くのプロジェクトと同様、まだ実現できない技術の空想である。面白いが、数カ月のうちに自宅にやってくるような段階ではまったくない。

それでも、イケアやSPACE10のプロジェクトは、将来的なARの利用法に関するヒントを与えてくれる。「イケアはARの可能性に非常に興味をもっています。また、アップルがあらゆるところでARメガネが使われる未来に向けて準備を進めていることは、誰もが知るところです。ARメガネが容易に入手でき、機能するようになったら、こうしたプロジェクトはARメガネで活用されることになるでしょう」と、ヴァンダーポールは話す。

とはいえヴァンダーポールは最後に、「Everyday Experiments」の背後にある意図は、こうしたプロジェクトを実社会にもたらすことではないと語っている。本来の目的は、人工知能や機械学習といったテクノロジーの可能性を、家に関連づけてみせることだという。

「こうしたプロジェクトの一部がいずれ具体的になり、イケアの広大なエコシステムに採用されるかもしれません。しかし、何よりもまず、ユーザーやデザイナー、技術者にインスピレーションをもたらすことが重要なのです」

※『WIRED』によるイケアの関連記事はこちら

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