日に日に米国の債務上限問題が金融市場で重みを増しているが、相変わらず米国債は安全資産として買われている。25日には、2年債も10年債も利回りは一時0.1〜0.2%急落(価格は上昇)した。米地銀のファースト・リパブリック・バンクの経営不安が再燃し、米消費者信頼感指数も急落。リセッション(景気後退)懸念が高まり、安全資産へのマネーシフトが加速している。
唯一、米国債の債務不履行(デフォルト)不安を映すのは、満期が今年7〜8月(債務上限期限)の短期財務省証券が売られていること。
信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で米国債の料率上昇が注目されるが、米国債市場と規模を比較すると月とすっぽんだ。
米国債の新たな買い手として注目されるのが個人投資家だ。機関投資家の購入が圧倒的な状況は変わらないが、徐々に存在感を高めている。米国債の利回り(イールド)は3〜4%台。対して、銀行預金の利息はいまだ低水準にとどまる。ただでさえ、銀行不安による資金流出が急増するなかで、預金から米国債へのマネー移動は加速している。「質への逃避」と同時に、より高いイールドへのシフト、さらに「流動性への逃避」といえる現象だ。
総じて、米国債市場は断トツの流動性を持ち、ニューヨーク金融市場の心臓部にある。イエレン米財務長官は、財政を預かる立場として、万が一にも債務不履行となれば、壊滅的被害をもたらす、と強く警告する。しかし、これは「財務長官の立場としての発言」だ。米国の公的累積債務は既に天文学的数字に達しており、大きすぎてつぶせないのは明らかだ。
「陰謀説」にも使われやすい事象でもあり、筆者は「恐怖心をあおるために尾ひれをつける傾向」のほうを憂慮する。共和党と民主党の「プロレスごっこ」という表現のほうが、現実的であろう。
なお、日本も膨張した公的債務問題をかかえており、他人事ではない。
しかも、「米国債務上限法」(=超党派予算法)のような財政均衡圧力となる法律もない。
日本国債を発行する財務省と、日本国債を購入する日銀の間には堂々と「アコード(共同声明)」が存在してきた。米国ではタブー視される中央銀行と財務省の関係だ。しかも、日銀総裁は変わっても、大規模な金融緩和政策で日銀が大量に保有する日本国債・日本株式の「出口」も見えない。やはり、大きすぎてつぶせない状況に陥っているのだ。
日米とも、どこかで臨界点は来るのだろう。今後数十年で、一定の確率で発生するという意味では大地震予報に似ている。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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