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日銀、利上げで来年も世界の中銀で特異な存在に-米FRBは利下げへ - ブルームバーグ

長きにわたりデフレ退治に挑む日本銀行は、世界の中央銀行の中で特異な存在であることに慣れてしまった。それは2024年も変わらない可能性が高い。

  消費者物価が1年半余りにわたり物価目標の2%を上回る水準で推移する中、植田和男総裁は世界最後のマイナス金利政策を撤廃するとの見方が広がっている。一方、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)がほぼ同じ時期に利下げを開始するとの見通しが強まっている。

  「今できるのか、もうできないのかという状況」と語るのは、日銀出身で物価研究が専門の渡辺努東京大学大学院教授。「もし今回の局面で正常化できない場合は、残りの任期は同じ金融緩和を続けていくしかないだろう」との見方を示す。

硬直した政策金利

日本では四半世紀にわたりゼロ%付近で推移

出所:ブルームバーグ、日本銀行、FRB、ECB

  日銀の氷見野良三副総裁は6日の講演で、大規模な金融緩和政策からの出口が家計や企業、金融機関に与えるメリットに言及。7日には植田総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことから、市場には早期の政策正常化観測が急速に強まった。

  総裁発言を受けて7日の東京市場では急速に円高が進み、10年国債利回りが今年最大の上げ幅を記録した。金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場は、1月会合までのマイナス金利解除(0.1%の利上げ)の確率を4割弱と見込んでいる。

  事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は今月18、19日の金融政策決定会合で、政策正常化に急いで踏み出す必要性はほとんどないと認識しているという。ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に1-6日に実施した調査では、マイナス金利解除が来年4月会合までに行われるとの予想が67%で、最多は4月の50%だった。

マイナス金利解除、日銀は今月急ぐ必要ほとんどないとの認識-関係者

  一方、FRBは13日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、3回連続となる主要政策金利の据え置きを決定した。24年に複数回にわたり、合計で0.75ポイントの利下げを行うことも示唆され、積極的な利上げキャンペーンが終了したとのシグナルを明確に発した。

  FOMCの決定を受け、事前に利下げけん制を想定していた市場は大きく反応し、米金利は期間が短い債券利回りを中心に低下。米金利先物市場が織り込む利下げ開始時期は3月が80%程度とFOMC決定前の40%程度から大幅に上昇した。14日の東京外国為替市場では、円相場は対ドルで1%超上昇し、一時140円台を付けた。

The Fed's December Dot Plot

世論と政局

  世論も日銀の政策正常化を後押しする。通常であれば企業や家計の借り入れコストが膨らむことになる利上げには、政治を含めて抵抗が強いが、インフレ懸念が世界を覆う中で、価格転嫁が受け入れられやすい情勢にある。岸田文雄政権は経済対策の柱に物価高対策を掲げており、その裏付けとなる23年度の補正予算が臨時国会で11月に可決されたばかりだ。

  日銀が超低金利政策を続けることによる日米の金融政策の方向性の違いが一時1ドル=150円を超える円安につながり、輸入物価の上昇が食料品や日用品の値上げを招いてきた。足元では物価上昇を反映して実質賃金が19カ月連続で前年を下回っており、日銀の緩和政策への家計の批判も強まりやすい。

  一方、岸田政権は自民党の派閥による政治資金パーティー収入の裏金化問題の対応に追われている。岸田首相は13日の会見で日銀の金融政策運営について、デフレ完全脱却や構造的な賃上げなど政府の経済対策を「しっかり念頭に置きながら、適切な判断を期待したい」と語った。政局が混迷する中、拙速な金融政策変更が市場の混乱を招き、政権の足を引っ張るような事態は日銀としても避けたいところだ。

情報発信

  マイナス金利解除後の政策運営を円滑に進めるためにも、日銀の説明と政策変更の内容やタイミングがいかに整合的に行われるかが重要なポイントになる。植田総裁は、足元まで19カ月連続で2%を上回って推移する消費者物価について、輸入物価上昇に伴う価格転嫁が中心であり、日銀の2%目標の持続的・安定的な実現につながるものではないと説明している。

  目標達成には、コストプッシュ圧力が減衰した後もインフレ期待や需給ギャップ、賃金などを反映する基調的な物価上昇率が徐々に高まり、賃金と物価の好循環が実現することが不可欠という。今年の賃上げは30年ぶりの高水準を実現したが、物価上昇が賃金を押し上げるだけではなく、賃金が物価に波及する相互関係の強まりが重要との見立てだ。

YCCの柔軟化進む | 日銀が長期金利の上限を緩和

  日銀は来年の春闘の重要性に何度も言及しているが、持続的・安定的な物価2%の実現に必要な水準や判断できるタイミングなどは明らかにしていない。植田総裁は10月の会見で、「見通し実現の確度が少し高まってきていることは事実」としつつ、「ある程度以上のところに来てほしいという、その閾値(しきいち)みたいなところにまだ達してない」と説明した。

  米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、日銀の金融政策について「もし春闘が低調に終わり、24年6月、7月に低いインフレ率の数字が出始めれば、正当な理由による利上げは難しくなるだろう」と指摘。その上で「純粋な予想として、3月末までに利上げが行われる可能性は50ー70%だとみている」と語った。

  一部のエコノミストは、日銀の政策正常化によって日本の投資家が資金を自国に還流させた場合、国際金融市場に影響を与えることを懸念している。国内総生産(GDP)の約1.3倍に膨らんだバランスシートが出口局面で日銀財務に与える影響に加え、保有する多額の国債や上場投資信託(ETF)の処理方法、日本の財政負担の拡大など課題は山積している。

  米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、「最も深刻な金融危機は、思いがけないところで起こることが多い」とし、「日本の復活は世界経済にとって良いことだが、日本の金利が復活することは大きなリスクとなり得る」と述べた。

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(市場の動きを差し替え、チャートも追加して更新しました)

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