16日の米金融市場では米国債相場が上昇する中、S&P500種株価指数は小幅続伸。一連の経済統計で景気の漸進的な減速が浮き彫りになり、連邦準備制度理事会(FRB)は数十年ぶりの積極利上げを終了するという観測が補強された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4508.24 | 5.36 | 0.12% |
ダウ工業株30種平均 | 34945.47 | -45.74 | -0.13% |
ナスダック総合指数 | 14113.67 | 9.83 | 0.07% |
米株式相場は前日までの上昇で「買われ過ぎ」の領域に接近していた。この日は小売り大手の ウォルマートが個人消費に対する慎重な見通しを明らかにした一方、百貨店のメーシーズは予想を上回る決算で株価が上昇。シスコシステムズは弱気見通しを嫌気して売られた。
米失業保険申請件数の統計では継続受給者数が前週から増加し、約2年ぶりの高水準となった。失業者が新たな仕事を見つけるのが一段と難しくなっていることが浮き彫りとなった。米鉱工業生産指数の統計で、 製造業生産は自動車メーカーと部品サプライヤーの活動後退を反映し、予想以上に落ち込んだ。 米住宅建築業者のセンチメントは今年最低の水準に落ち込んだ。
ハリス・フィナンシャル・グループのマネジングパートナー、ジェイミー・コックス氏は「金融政策のタイムラグがやっと経済に追いつきつつある。投入コストから鉱工業生産、そして労働に及んできた」と話す。「インフレ相手の闘いは、経済成長を維持しリセッション(景気後退)回避する闘いに変わる。利下げは人々が考えているよりも近い。早ければ2024年3月かもしれない」と述べた。

出所:ブルームバーグ
米連邦準備制度理事会(FRB)の クック理事は、必要以上に急激な景気悪化を招くリスクに留意しているとの認識を示した。金融環境の引き締まりによって経済の一部に負荷がかかっていると指摘した。クリーブランド連銀の メスタ-総裁は、追加利上げがまだ必要かどうかは判断しかねていると述べ、政策当局者らには経済の動向を見極める時間があると付け加えた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は連邦準備制度理事会(FRB)がインフレとの闘いで勝利を宣言するのはまだ早過ぎ、利下げもずっと先の話だが、最近のデータは追加利上げに対する長引く不安を打ち消すだろうと指摘。
「そこで問題となるのは、こうした『FRBフレンドリーなデータ』が今後も株式市場で強気のモメンタムを生むのかということだ」と述べた。

S&P500種株価指数のRSI(14日ベース)
出所:ブルームバーグ
今年の米国株式相場が上昇したにもかかわらず、投資家は不透明な経済見通しとキャッシュがもたらす魅力的なリターンを理由に市場参入を見合わせた。ゴールドマン・サックス・グループはこうした警戒感は2024年も続くとみている。
米国株式チーフストラテジストのデービッド・ コスティン氏は「株式はプラスのリターンをもたらすだろうが、リスクフリーでリターンが5%のキャッシュは引き続き株に代わる選択肢として競争力が高い」と評価。「現在の金利環境で3カ月物財務省短期証券(Tビル)の利回りは5.5%で、S&P500種の株式益回りに近い」と説明した。
個別銘柄では、 アップルがスマートフォン「iPhone」に搭載するモデムチップについて、クアルコム製に代わる自社開発品を目指す数十億ドル規模の計画にまた遅れが生じている。中国の電子商取引大手 アリババグループはクラウド事業部門のスピンオフ(分離・独立)計画を取りやめた。先端半導体の対中輸出を巡る米国の規制が影響したとしている。
米国債
米国債相場は軒並み上昇。朝方発表された 失業保険統計が影響した。新規の申請件数が予想より多かったほか、継続受給者数が増加し、約2年ぶりの高水準となった。午後のレンジ取引では、朝方の上昇をおおむね維持。ニューヨーク時間午後3時を過ぎると出来高は細った。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.62% | -7.9 | -1.68% |
米10年債利回り | 4.44% | -9.4 | -2.07% |
米2年債利回り | 4.84% | -7.0 | -1.43% |
米東部時間 | 16時53分 |
中期債が取引の中心となり、利回りは最大9bp下げた。10年債利回りはこの日の低水準付近で引けた。
相場上昇の大半は、午前中の失業保険統計が発表された後のもの。統計を受けて金利市場では利下げ見通しの織り込み具合が強まり、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに約52bpを見込む場面もあった。前日の引けの時点では45bpだった。7月利下げの織り込み具合はこの日の引けまでに49bpとなった。
午前の取引では原油価格の下落も米国債の支援材料に加わった。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は取引終盤まで軟調を維持した。米国債先物は期近のブロック取引やフェデラルファンド(FF)金利先物に大口の売りが出たことなどが影響し、上昇の勢いが失速した。
外為
外国為替市場では円が上昇。一連の弱い米経済統計と、ウォルマートによる個人消費見通しを受けて、米国債利回りが低下した。WTI原油先物の大幅安も資源国通貨を圧迫した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1250.67 | -0.29 | -0.02% |
ドル/円 | ¥150.75 | -¥0.61 | -0.40% |
ユーロ/ドル | $1.0852 | $0.0004 | 0.04% |
米東部時間 | 16時53分 |
ブルームバーグ・ドル指数は一時0.3%下落。ドルは主要通貨の大半に対して上昇、商いはまずまずの活況だった。
10年債利回りの大幅低下や、失業保険統計などの米指標、クリーブランド連銀のメスタ-総裁発言などが材料になった。
ドルは対円で一時150円29銭まで下落。米国債利回りの低下が影響したほか、クロス絡みのドル売りが出た。ボラティリティーは全般に低下した。
ユーロは対ドルで一時0.4%上昇し、2カ月ぶり高値を付けた。ポンドは対ドルで小じっかり。英国の金利は長期にわたり高止まりする公算が大きいと、イングランド銀行(英中央銀行)の ラムズデン副総裁が述べた。

出所:ブルームバーグ
原油
ニューヨーク原油相場は急落し、7月以来の安値に沈んだ。在庫の積み上がりが意識されたほか、下値支持線を割り込んだことで売りが誘発され、トレンドフォローの取引が下げを加速させた。
TDセキュリティーズのアナリスト、ダニエル・ガリ氏は「複数の売りプログラムと連動して下げが加速した可能性が高く、悪循環を引き起こしている」と指摘。平均的な商品取引顧問(CTA)はこの日の取引終了までに買い持ち高の大半を手じまっているだろうとし、CTAが「痛みを助長している可能性が濃厚だ」と述べた。
石油輸出国機構(OPEC)内外の主要産油国で構成するOPECプラスの協調減産やロシアの原油輸出削減にもかかわらず、原油供給はなお潤沢だ。15日公表された統計によると、先週の米原油在庫は8月以来の水準に積み上がり、WTI原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングでも在庫が増加。一方、世界最大の原油輸入国である中国では先月、石油精製会社がマージン悪化を受けて1日の精製ペースを落とした。
さらに、朝方発表された米失業保険データが成長減速を示唆する内容となったことも相場の重しとなった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は前日比3.76ドル(4.9%)安の1バレル=72.90ドルで終了した。在庫拡大に加え、200日移動平均線を下抜けたことで売りが膨らんだ。北海ブレント先物1月限は4.6%安い77.42ドル。

出所:NYMEX
金
ニューヨーク金相場は反発。米失業保険データが労働市場の減速を示す内容となり、米金融当局が金利を据え置くとの観測が高まった。
オアンダのシニア市場アナリスト、クレイグ・アーラム氏はリポートで「失業保険のデータは最近の指標に続き、労働市場とおそらく米経済がやや冷え込みつつあることを改めて示した」と指摘。金の強気派は1オンス=2000ドルの節目に照準を定めているかもしれないと述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時04分現在、前日比24.22ドル(1.2%)高の1オンス=1984.07ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は1.2%高い1987.30ドルで終えた。

出所:ブルームバーグ
原題: ‘Fed-Friendly’ Data Lift Bonds as S&P 500 Wavers: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Rally After Jobless Claims Rise, Hold Bid Into Close(抜粋)
Yen Rises Amid Growth Concerns, Oil Drops: Inside G-10(抜粋)
Oil Plunges to July Low as Algorithms Amplify Supply-Driven Drop(抜粋)
Gold Climbs as US Jobless Claims Underline Weaker Labor Market(抜粋)
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