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株価は「34年ぶり」好調なのに人件費への分配は「最低水準」続く大企業 儲けは何に消えたのか? :東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

 2023年最後の取引となった大納会の29日、東京株式市場は日経平均株価(225種)が前年末に比べて7369円67銭高い3万3464円17銭で取引を終えた。年末の株価としては過去最高だった1989年以来、34年ぶりの高値となった。業績好調な大企業は株式市場をけん引した半面、稼ぎを人件費に回す割合「労働分配率」は4割ほどと過去最低の水準だ。識者は「大手企業は賃金に回せる余裕がある」と指摘する。(押川恵理子)

 労働分配率 企業の生みだした付加価値が、どれだけ働く人に還元されているかを示す割合。高いほど働く人への配分が手厚いと言えるが、高過ぎると経営を圧迫する。本紙は財務省の法人企業統計(金融、保険業を除く)をもとに、人件費を付加価値(経常利益、人件費、減価償却費などの合計)で割って、分配率を算出した。ほかに、経常利益の代わりに本業のもうけである営業利益を使う算出方法や、雇用者報酬を国民所得で割るやり方がある。

◆内部留保(利益剰余金)と株主への配当金に…

 財務省が今月発表した法人企業統計をもとに、大企業(資本金10億円以上)の労働分配率を本紙が算出した。2023年7〜9月期は40.1%で、33.1%だった4〜6月期よりは上がったものの、低迷が続く。岸田政権が目指す「成長と分配の好循環」の実現はまだ見通せない状況だ。

 労働分配率は企業の利益などに占める人件費の割合のこと。22年度の割合は36.6%でここ50年で最低だ。経常利益はコロナ禍からの回復で前年度比15%増だったものの、人件費の伸びは1%弱にとどまった。

 大企業の労働分配率の低下傾向は、2000年代前半から続く。逆に増え続けているのが内部留保に当たる利益剰余金と株主への配当金。資金繰りにあえいだ08年のリーマン・ショック以降、企業は手元資金を蓄えてきた。世界的に株主還元の動きが強まり、賃金よりも株主への分配を優先してきたためだ。

 法政大経営大学院の山田久教授(労働経済学)は「企業は賃金増を後回しにしてきた。局面は変わりつつあるが、賃上げはまだ本格化していない」とみる。

◆中小企業は70%超…背景には不利な「仕入れ価格」

 一方、雇用の約7割を占める中小企業の労働分配率には別の問題がある。分配率は70%超と既に高く、収益力が高くない中で、人件費をこれ以上増やしづらい構造だ。

年末の株価としては34年ぶりの高値となった日経平均株価3万3464円17銭を表示する東京証券取引所の株価ボード=AP

年末の株価としては34年ぶりの高値となった日経平均株価3万3464円17銭を表示する東京証券取引所の株価ボード=AP

 中小に賃上げを波及させることについて、山田氏は「大手企業は中小企業からの仕入れ価格を抑えて利益を上げている面もある。価格の適正化が重要だ」と指摘。さらに中小企業同士が人材育成や設備投資で連携する仕組みづくりなど、生産性向上につながる政策支援を政府に求めている。

   ◇ 

 大納会の東京株式市場は日経平均株価が2年ぶりに前年を上回った。好調な企業業績に加え、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの高まりなどを受けて海外マネーが日本市場に流れ、相場を押し上げた。東証株価指数(TOPIX)は前日比4.37ポイント高の2366.39で取引を終えた。出来高は12億8510万株だった。

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