―目先は75日移動平均線近辺の攻防か、米金利上昇継続リスクに警戒感も―
17日の東京株式市場で、日経平均株価は大幅に3日続落し、フシ目の3万8000円を下回った。3月下旬のザラ場の史上最高値4万1087円から3000円を超す下げとなるなど、4月に入り調整色を強めている。緊迫化する中東情勢に加えて、米国では強い内容の経済指標の発表が相次ぎ、米景気の緩やかな鈍化と利下げが共存する「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオへの楽観的な見方が後退しつつある。
その米国では早期の利下げ観測が後退し、年始には想定されなかった「追加利上げ」の可能性が指摘されるようになった。原油相場の上昇も米国でインフレが高止まりするリスクを強める方向に作用している。
更に、日本時間17日午後に発表されたオランダの半導体製造装置メーカー大手ASMLホールディング<ASML>の2024年第1四半期の決算は、売上高と純利益が前四半期となる23年第4四半期から減少。新規受注は36億ユーロと市場予想を下回った。半導体市場の先行き警戒感が広がり、レーザーテック <6920> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]などが後場に崩れる展開となり、投資家のリスク許容度を一段と低下させた。
外国為替市場ではドル円相場が1ドル=154円台半ばと34年ぶりのドル高・円安水準で推移しているものの、トヨタ自動車 <7203> [東証P]やホンダ <7267> [東証P]など輸出関連株に対し買い向かう姿勢はみられない。同じことは円債市場に関しても言える。歴史的な円安を背景に日銀が早期に追加利上げに踏み切るとの見方がくすぶるなかで、17日の日本の新発10年債利回り(長期金利)は0.885%に上昇し、およそ5ヵ月ぶりの高水準をつけた。だが、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]など金利上昇の恩恵を受けるメガバンク株も軟調に推移している。大型株全般に売り圧力が掛かっている状況だ。
多くの不透明要因が横たわるなかで、市場参加者がひと際、神経質となっているのが、米国の金利動向だ。米長期金利が5%を突破した昨年秋に金融市場は動揺を隠さなかった。直近で4.6%台の米長期金利が再び5%台に乗せるかどうかは未知数ではあるが、ソフトランディングのシナリオを前提にして、流動性相場の継続を見込んでいた投資家にとって、足もとの利下げ観測の後退は、前提そのものを崩しかねない不透明要因にほかならない。
水戸証券の酒井一・投資顧問部シニアファンドマネージャーは「利上げ時期の後ずれなら許容範囲だったが、米景気が思いのほか強い状況であり、追加利上げのリスクもマーケットで語られるようになった」と指摘。「実際に追加利上げを織り込む形になれば株式市場にはネガティブな影響は避けられない」との見方を示す。日経平均が75日移動平均線(3万7780円97銭)を下回れば損失覚悟の売りが出る恐れがあるという。ただ「3万6000円台まで下押しした局面では、中長期目線の投資家の資金流入が見込めそうだ」と読む。
ほかにリスク要因と挙げられる中東情勢に関しては、イランのドローンとミサイルによる攻撃に対し、イスラエルが再報復するのではとの見方がある。ただし、米メディアはイスラエルの報復について米政府が「限定的」なものになると分析していると報じている。足もとでは米原油先物相場の上昇には一服感も出ている。前週に比べると、投資家の警戒感は幾分、弱まった状況にあるが、引き続き注視が必要な状況なのは言うまでもない。ASML決算を機に、半導体株の地合いがどう変化するのかも注目されている。
そして、日本国内では4月下旬から3月期決算企業の本決算発表が始まる。本決算シーズン前は企業による自社株買いが入りにくい時期であり、需給面でサポート役を一つ失った状況にあることも、留意すべきだろう。
岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは今回の日本株の調整について、「基本的には年始からの上昇で強まった過熱感が冷却に向かっている局面での株安だ」と指摘する一方、「過熱感は薄れ、TOPIXのPER(株価収益率)もピークに比べると低下したが、割安感があるかというとそうではない」とし、「メインシナリオではないが、3万6000円を下回ってもおかしくはない状況でもある」とみる。半面、「米長期金利が5%に接近したとしても、昨秋と違って中国景気を巡る懸念は後退している。国内では5月の大型連休明けは自社株買いの動きも期待できる」とも話す。
国内では間もなく決算シーズンを迎える。為替相場や米金利動向、国内企業の業績見通しなど、数多くの変数を冷静に分析するための器用さが投資家に求められることとなりそうだ。
株探ニュース
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